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「だったらこっちに遊びにおいでよ」
Nさんが電話口で言った言葉に、めずらしく、ちょっと暖かさを感じた。
夏の終わりの夕暮れだった。大通公園の鳩が一斉に赤い空へと舞い上がった。

各航空会社には「超割」などと称し,片道1万円で国内ならどこにでも行けるというサービスがある。利用しない手はない。でもこれには当然制約があって,2か月前の予約・購入が必要,かつ変更不可となっている。だから,なかなか手を出せなかったが,漂泊の思い止まず,リスク覚悟で予約してみることにした。

さて,どこへ行こうかな。暖かいところがいいな。沖縄でゴーヤ囓ろうか,四国で四万十川に飛び込もうか,どうせひとりぼっちの山頭火。南紀白浜という言葉も浮かんだところで,坊主頭が出てきた。
そうだ,関西の怪しい旅人Nさんに相談してみよう。
で,冒頭の言葉にジワッと来て,甘えることにした。
飛行機の手配も済んだ。

そのうちNさんが練った旅の行程表が送られてきた。紀伊半島の要所を巡る魅力的なコースだ。時期は11月半ばでうまくすれば紅葉シーズンだ。宿の手配も全て終わり,後はその日を待つばかりとなった。とても楽しみにしていた。

そんなある日、Nさんからのメール。
何気なく開けると,仕事で旅行に行けなくなったという。
好事魔多し。
期待していただけにがっくりうなだれた。
一人旅でそのコースを回ろうかとも思ったけれど,折角手配してくれたNさんに悪い,というか気持ちがすっかり弥次喜多モードになっていたから,潔く断念した。
もちろん予約の変更は出来ずキャンセル料を半額取られるのはイタイが,つまらない思いで旅をし散財するよりはマシだ。他日を期そう。

年が押し詰まってきた頃,ある期待で,再び旅心が高まってきた。それは航空会社のマイレージがぎりぎり何とかたまりそうなのだ。
マイレージは,通常飛行機に乗った距離に応じて航空券をサービスするが,ショッピングマイルといって,カードで買い物してもマイルをためられるのだ。それを知って,今年はスーパーの数百円の買い物の果てから、カードを使えるところは極力カードを使い,飲み会の時は率先して支払い担当者となってカードを使い,これじゃカード会社の陰謀にまんまと乗せられているな,と頭の片隅で思いながらも,可能な限り使いまくってみた。
その結果,年も押し詰まってくる頃に、去年までの繰り越し分と合わせて、ようやく航空券交換可能マイルがたまりそうになったのだ。
しかも,繰り越したマイルが,年末で失効するので,来年になるとまたマイル不足になってしまう。

ということは、是非どこかへ行かなくてはならないな。またまた,そぞろ神が心を狂わせる。
さあどうしよう,もう寒いから,やっぱり沖縄に行ってシーサーとにらめっこでもしようかとも思った。
けれどNさんとの計画をリベンジするのが人の道ってもんじゃねえですかい,旦那。
そのことをNさんに話して快諾してもらい,携帯電話を閉じて目を上げると,冬の到来に密かに怯える午後の大通公園。
イチョウの葉が敷き詰められて、底が黄色く光っている。



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