Nさんの目が赤い。
窓外の明るい曇り空といいコントラストだ。
潮騒の音と,あまりの暑さでよく眠れなかったらしい。
意外にデリケートなのだ。
窓を開けると,小雨がぱらつく知床の海辺では,網や浮きを挟んでカモメとカラスが睨み合い,時折鋭い声を上げている。
朝飯は,卵,海苔,鮭など定番メニューだった。でも,普段それもなかなかありつけないぼくとしては,嬉しかった。
オバサンたちが昨夜の異常な暑さを話題にしている。
民宿を後にし,知床半島の先端へ向かう。
今日の運転はぼくから始まる。Nさんは気持ちよさげに船を漕ぐ。
Nさんのいびきが止まった。知床五湖の入り口に着いたのだ。
看板を見ると全部回るのには相当な時間がかかる。しかも小雨が1/f揺らぎで強くなったり小降りになったりしている。
せっかく来たので一湖だけでも見に行くことにした。もちろんNさんは全部見たことがあり,それぞれの湖で相貌が大きく違うのが素晴らしいのだ,と蘊蓄を垂れる。
熊笹が生い茂る獣道を15分ほど歩く。
熊笹は北海道の原風景のひとつで,ぼくが子供のころも,裏山に行けばあらゆる隙間に自生していた。よくこの葉で笹舟などを作って遊んだものだ。
ふと思い出して笹の先端のきつく丸まった若葉を抜き,一旦ほどいて逆から巻く。それを吹くと,ビイーと音がする笛になった。思わず遠い目になる。
突然視界が開け,知床一湖が眼前に広がった。
明るい原生林に囲まれた静かな湖だ。
遠くの鳥の声だけが聞こえる。
ぼくらも言葉少なに眺める。
風はない。
雨の音が懐かしい。
さらに,知床半島の先端を目指して車を走らせる。
途中から砂利道になり,最果ての地へ来た感慨が胸の底を流れる。
カムイワッカの滝には観光客がタムロしている。
これは岩肌を舐めるように流れ落ちる滝で,滝の上が露天風呂になっているらしい。
そこに昇るための草鞋をレンタルする露店などもあって,すっかり観光地だ。
帰りに寄ることにし,さらに奥地へ向かってみる。
さすがに観光客の車もほとんどいない。
知床大橋にたどり着く。
この先もまだ道が続いていたが,ガソリンが切れかかっているのに気が付き,この辺で勘弁してあげることにした。
最果てのバス停からオホーツク海を見渡すと,ナニモカモ忘れてしまいそうな大きさだった。
流れ流れてここまで来てしまった。
一旦ウトロまで戻ってガソリンを入れ,知床横断道に分け入る。
本当にこんな立派な道路が必要だったのだろうか,と二人で痛烈に批判しながら,快適なドライブを堪能する。
知床峠は霧雨で何も見えず,淡々と通り過ぎる。
下りはカーブが連続し,路面は雨で濡れている。
Nさんの運転が危なっかしい。横に座っていると,ぼくよりちょっとスピードを出しすぎ,ブレーキのタイミングもちょっと遅く感じられる。体が固くなって,しばらく無言になる。
「今足突っ張ったでしょ。そんなに緊張しなくていいから。大丈夫だから。」とNさん。
カーブに突っ込むときぼくが無意識にブレーキを踏む右足に力が入ったのを見破られたのだ。
事故を起こして死んでもいいけれど,テレビとかで報道されて,中年の男二人が山道で何やってたのか,と思われるのだけは嫌だ。是非とも避けたい。どうせ死ぬなら,男女の逃避行か,などのシチュエーションで報道されたい。
羅臼に着いた。
道の駅をみつけ休憩する。二階の展望スペースから暗い海を眺める。雨は上がったようだが,港に密集する漁船が白い船腹を見せてもだえ続けている。
もう昼なので,お腹が空いた。
市街へ車を向けると,橋の上で何人かが川を見下ろしている。何だろうと車を降りて近づくと,おー,いるいる。鮭が遡上しているのだ。はじめは,あそこにいる,ここにもいた,と一喜一憂して見ていたが,橋の真下を見て驚いた。もう何百匹もの鮭が折り重なるようにして尾を振っているのだ。彼らは遡上の順番でも待っているのだろうか。
これを見て衆議一決し,イクラ丼を食べることにした。
ガイドブックを頼りに店を探す。羅臼市街の細い路地は生活臭が濃い。
目当ての寿司屋を見つけイクラ丼1500円を注文する。
名物のいくら丼はたいてい胸が悪くなるほどイクラが乗っかって,それを売りにしている。ぼくも以前小樽の某有名店で食べて,実際に胸焼けでひどい目にあったことがある。
が,ここのは質の高いイクラとご飯とのバランスがとても良く,上品なおいしさだった。二人とも満足して,お茶を同時にズズッとすする。
一本道が地平線のはずれまで続いている。道の左右には水平線が延びる。
このパノラマに怪しげな雲が蓋をしている。
スピードを上げても風景が動かない。
ぼくらは野付半島を走っている。
左手に民家が一軒,後方に飛び去る。
この家の人が誰かを招待するときは分かりやすいだろうな。
「えと,野付半島をずーっと来ればいいから。」
右手に立ち枯れの林が見えてきた。これはナラワラという。楢の木だから。
道の終点に着いた。食堂兼土産物屋がある。
ここから,トドワラの海岸までかなりの距離を歩かなくてはならない。
腰の高さほどの草叢の中に二本の小道が続いている。一本は人のため。もう一本は轍が深い馬車の道だ。雨上がりで,道の所々が,ぬかるんだり水たまりになったりしている。その水たまりに低くたれ込めた恐ろしい雲が映る。ススキの群落を風の指が梳る。
道の半ばに立ち止まる。
全天,全周,どこまでも無彩色の音楽だ。
言葉が意味を失う。
足下のハマナスの赤い実は,女神の死骸の白い胸に幽かに煌めく宝石だ。
見渡すと一面に散りばめられた赤い実。
何と数多の屍か。
遙か遠くから来た巨大な魂が,ぼくの耳元で
「この世の終わりの3日前」
と呻き,また永劫の彼方へ吹き去っていく。
ここには既に神はいない。
トドワラとはトドマツが砂嘴の浸食による海岸の後退で立ち枯れたもの。
Nさんによると,20年前に比べトドワラの数が随分減ったとのことだ。でも,そこかしこに倒れる白い木々は,思い半ばで倒れつきた動物の骨のように見えた。最後の時その目には何が映っていたのだろう。
野付半島を逆走していると,右手の海に大きな島影が見える。
国後だ。
こんなに近いとは。手が届きそうだ。
国境を示すためロシアが設置した赤いテープが、海に延々と横たわっている。
これは嘘。
雲が次第にまばらになって、陽がかなり傾いてきたことに気づく。
今度は霧多布岬を目指す。
灯台のある岬は,名にし負う霧の名所だ。
薄明るい霧に覆われて,岬への坂を踏みしめていくと,次第に現実感が失われていく。
灯台の赤い建物が徐々に鮮明に浮かんでくる。
海を遙かに見下ろすと,激しくうち寄せる波頭が幻灯機の映像のように霞んでいる。
遠くの山の頂で,風力発電機の羽が夕日を背にして止まっている。
近くの琵琶瀬展望台に急ぐ。
ここから霧多布湿原が見渡せる。
遠く蛇行し,夕明かりを反射する川に沿って,民家が見える。暮れかけた昏い空気の中に,窓の明かりが懐かしく明滅する。
人恋しくなってきた。今夜の宿はどうしよう。
取りあえず釧路を目指す。
途中の厚岸を通るとき,Nさんに牡蠣の名所だというと,知らなかったようだ。この旅では道東の蘊蓄に関しNさんの軍門に降り続けていたぼくは,手柄顔で説明する。名所の広島などと比べても,大きさ,味ともずっと上等だ。
「じゃあ,どこかで牡蠣食べましょうよ。」とNさん。
そうだ,そろそろ,夕食の時間だ。
ガイドブックをさっと見ると道の駅に牡蠣のレストランがあるらしい。
「道の駅って,あのお城みたいのかなあ。もう6時だし,やってるかなあ。」
「行ってみましょ。」
確かにそこは,立派な道の駅で,コンキリエという牡蠣料理のレストランも併設されていた。だが,全店シャッターがおりて閑散としている。
「遅かったかな。」
「いや,これ見て。ていうか,今日は定休日やんか。」
世間様におかれましては,本日は月曜日なのだ。
やむを得ず,車を釧路方面に向ける
「ああ牡蠣鍋おいしいでしょうね。」Nさんが涎をススル。
「安芸の宮島で食った焼き牡蠣はうまかったなあ。」
「牡蠣フライ噛んでジュッとした汁あふれて,あああ。」
「フレンチの牡蠣って日本のと種類が違ってさァ…。」
「レモン絞って,こう,ツルッと…。」
「セプテンバーだからRがついてるよね。」
頭の中が牡蠣で一杯になってる。
「やっぱり,厚岸で泊まっていきません。」
「そうしよう。そうしよう。でも民宿とかあるのかなあ。」
「さっき,遠藤旅館と書いた看板あったよ。」
「ほんと?目ざとい。」
車をUターンさせ,厚岸に向かう。
古びた名前だけの看板が確かにあったが,ずーっと走ってもその一枚しかない。
ついに厚岸をかなり通り過ぎてしまった。
変だなあ,もうつぶれたのかなあ,と取って返すと,別な看板を発見。ホテル金万とある。
じゃあ,そっちにしよう。その看板に従い,厚岸市街に入ってみる。
町中をぐるりと回ってみるが分からない。宿泊施設自体,商人宿風の旅館が1軒あるだけだ。牡蠣の買い付けぐらいしかよそ者は来ないのだろうか。
ちょっと誰かに聞いてみましょ,とNさん。
「なるべく聞き易そうな人は…,あ,あの娘がいいな。」
Nさんは運転席の窓を降ろし,1人とぼとぼ歩いている女子高生に声を掛ける。
「すいませーん。ホテル金万てどこか知ってる?」
こんな薄暗い夕方に,関西弁の坊主頭オヤジに声を掛けられたためか,彼女は不安げに足を早める。拉致されてホテルに連行されると思ったのだろう。
ぼくが後ろから,優しい目顔で大丈夫だよとフォローしてあげたので,ようやく立ち止まって答えてくれる。
「えーーと,あそこの踏切渡って,左へ行って右へ行って…。」
「じゃあ,遠藤旅館てどこにあるんや。」
「えーーと,あっちの川を渡ってずーっと行って…。」
「そのホテルと,遠藤旅館とどっちがお薦めや。」
「それは…,好みだから。」
「どっちかに決めてくれへん?そこにするから。」
「えーっ。そういわれても…。」
「早よしてやっ。」
「じゃあ,ホテル金万。」
「おおきに。ありがとな。」
純情そうな彼女は逃げるようにして走り去った。かわいそうに。
言うとおり,車を走らせるが,結局見つからない。
「今度は今井さん聞いてや。」
「わかったよ。じゃ,あいつらに聞いてみっか。」
下校中の中学生が何組か歩道を歩いている。
Nさんは,よりによってその中でも一番不良っぽい奴らの前で車を止める。
歩道側のぼくはやむなくそいつらに声を掛ける。
「すいませーん。ちょっと教えてくんない。」
彼らは,ぼくの都会的香りに一瞬気後れしたようだが,代表格の奴が近づいてきた。
「ホテル金万って知ってる?」
「知ってます。えーーと,うーんと…。」
どうやらうまく場所を説明できないようだ。
そのうちに他の男子生徒や女子グループも近くに寄ってきて,10人ぐらいの人だかりになった。
「何やってるの?」
「ホテル金万だって。」
とか興味津々で言い合っている。
「えーーと,もう少し先に△△ストアーってありますから,そこを左に行って…。どこ曲がるんだっけ。」
仲間と相談しているが、埒があかない。
「わかった。その辺りに行けばいいのね。」見かねてぼくが助け船を出す。
「ええ,そこら辺をグルグル回ってれば見つかると思います。」
「ありがと。」
一生懸命で純朴な中坊たち。
きっと今日の彼らの夕餉は,関西弁ヤクザ風と都会的芸能プロ風の怪しい二人組の話題で持ちきりになるだろう。
グルグル回ってようやく探し当てたホテル金万は,昔ながらのビジネス旅館風で,きっと泊まってみればいい旅館なのかもしれないが、ぼくらにはピンとくるものがなかった。相談の結果、結局パス。
遠藤旅館をもう一度探してみるが見つからない。もう辺りは真っ暗だ。やはり釧路まで行ってホテルに泊まることにする。
釧路に近づくにつれ,明るい街灯が連なり,車のライトやテ−ルランプが交錯する。都市文明に帰還した気分だ。釧路がとんでもない大都市に見える。
久しぶりにアンテナが立ったNさんのiモードやガイドブックで検索し,そのうち中心街のホテルを何軒か実際に見てみる。繁華街を流していると,ネオンや赤提灯が揺らめき,意外と活気があるようだ。
結局,料金やロケーションからホテルノースシティーという小ぎれいそうなビジネスホテルに決める。
Nさんが,ちょっと離れた駐車場に車を置きに行っている間,ぼくがチェックインする。
彼は「眺めのいい部屋にしてもらってや。最上階がいいな。」と捨て科白を残していった。
フロントの事務的なお姉さんに勇気を出して聞いてみる。
「あのー,一番上の階がいいんですけど。」
彼女は苦笑して
「申し訳ありません。上の階は塞がってますので。」
「あのー,眺めのいい部屋にしてもらえますか。」
「申し訳ありません。裏側の部屋になります。」
極めて事務的に一蹴されてしまった。
結局,下の方の階で工事現場が見える部屋だった。
もう7時を過ぎているし,やむを得ないだろう。
窓を開けると青黒い夜風に乗って幽かに潮の香りがする。
すぐに,夕食を食べに出る。
幣舞橋方面にぶらぶら歩いていき,明かりの消えたフィッシャーマンズワーフ近くの炉端焼きに入ってみる。
一軒家でログハウス風の広い店内に入ると,沢山のテーブルが並び,それぞれのテーブルの中央には囲炉裏を切ってある。ぼくらは長いテーブルの端に案内される。
ここで,一悶着起こる。
Nさんが端に座ったので,ぼくがその隣りに座ろうとすると,Nさんと案内した店員が二人して変な顔をするのだ。Nさんの向かいの席に座るのが当然で,ぼくが,ここでいいよ,と言っても,どうしても向かいに座らせたがる。
Nさんは不思議そうな顔をしているし,店員は「よっぽど仲がいいんですね。」と皮肉っぽく笑う。
ぼくとしては,長いテーブルで席は十分空いているし,単にカウンターの席に座るような感覚だったので,かえって不思議だったけれど,コダワルつもりは全然ないので,トイメンに座った。
確か西欧文化的には,対面して座るのはビジネスとか,逆に恋人同士とかで,いずれも高い緊張関係にある場合だ。もっと気楽な関係の場合はたいてい並んで座る。今度映画でも注意して見てみるといい。
日本でも,対面する場合は膳を離して置いたり,広い卓を挟んだりして,相当離れて座る。
Nさんと顔を寄せて目と目を見つめ合いながら食べるなんて,想像しただけでも目玉がつぶれてゲロを吐いてそれが鉄板の上でいい案配に混ざりあって広島風お好み焼きになりそうだ。
きっとNさんとあの店員は,並んで座ることとイチャイチャする発情カップルのイメージが分かちがたく結びついているのだ。根っからの助平だ。
さて囲炉裏の中では炭が真っ赤になっており,その上に鉄の網を載せている。そこで,各自注文した海産物や肉を焼くシステムだ。
まずは何といっても牡蠣,牡蠣,牡蠣っ。
息子は就職して川崎の独身寮,娘は帯広の農家の長男坊に嫁いでしまい,退職してブラブラしている亭主が鬱陶しいのでパッチワーク教室の友達と一緒にパートやってます,という風情のオバサン店員が持ってきた牡蠣のひとつは,裏返すとおまけのように二まわりほど小ぶりの牡蠣がくっついていた。
「あーら,儲けたっしょ。」とオバサン。
「この牡蠣,厚岸の牡蠣?」,ぼく。
「さー。多分そうでないかい。」
いささか心許ない。
が,これで牡蠣の怨霊を鎮めることができる。
このおまけの牡蠣を焼いて開けてみると,ご本尊の牡蠣よりも身がびっちりつまっており,グリコのおまけ的満足感を得る。
Nさんが頼んだエビを持ってきたのは,札幌の短大出たけど勤め口がなく地元に帰ってきて取りあえずここで働いてます,お見合いは嫌だから恋人募集中,という風情の笑顔がかわいい店員さん。
大柄で桜色のエビが新鮮そうだ。
「このエビ,ホッカイシマエビ?」Nさんが聞く。
「えー?ちょっと待っててくださーい。」
彼女はどこかに消えて,すぐベテランぽいオバサン店員を連れてくる。もうちょっとで30組目の仲人を達成しそうなところで,父ちゃんが商売女にだまされて借金を作り,担保の漁船も取られ,夜逃げでもしようと思ったときもあったけれど,あの時に恩人の島貫さんに助けられたからこうやって元気に働ける,足を向けて寝られないべさ,と思っているに違いないこの腹の据わった感じの店員さんも,「さー,何かねえ。」と首をひねる。
Nさんが食べているエビの刺身の方を指して
「こっちのエビは分かるけどさ。」
「ボタンエビ。」Nさんと店員さんが同時に答える。
「こっちは知ってますって。」Nさんが笑う。
結局分からなかった。この辺が北海道的おおらかさだ。
「この『イカ』と『開きイカ』ってどう違うんですか。」メニューを見てぼくが聞く。
「『イカ』を開いたのが『開きイカ』です。」
「あっそう。」
開きイカを焼いていると,長年漁師をやっていたが軽い中気に当たって引退し,漁労長に紹介されたこの店で働くようになってもう11年,今の店長の経営方針にとってはお荷物だが,オーナーとの縁があるので,ボケ防止がてら仕方なく店に出させているに決まっている爺さんが,どこからともなく湧いてきて,
「もう裏返さないとだめだべさ!白くなったら食べていいから。」
と,しわがれ声で仕切る。
この爺さんは各テーブルをまわり精力的に仕切りまくっている。
もうそろそろ食べていいかな,と思った頃,また忽然と現れ
「ほら,早くしないと固くなるべさ。そのハサミで切って,ほら。」
と急かされる。
その他,ほっけ,焼き鳥,鶏皮,芋バター,舞茸バターなど次々焼いて食べる。
満足して店を出,薄い夜霧の中をふらふら帰る。
繁華街を通り抜けてみる。
目つきの良くないお兄さん方や水っぽい女性たちの姿が目に付く。そうだ。ここは港町なのだ。気の荒い船乗りたちが久しぶりの陸地で羽目を外す街。荒くれ者の安らぐ地,釧路。
夜空の遠く,霧笛が響く。
最後の夜だ。
ボトルに3分の1残ったスカッチを傾ける。
今回の旅で初めてノートパソコンを引っぱり出し,インターネットの某掲示板に石川啄木の歌を書き込んでみる。
しらしらと氷輝き
千鳥鳴く 釧路の海の
冬の月かも
ぼくらは今、釧路にいます。