表題:少年期−「九月の空」その後
著者:高橋三千綱
出版:集英社文庫(520円)

 高橋三千綱は大好きで、学生時代はなけなしの金をはたいてハードカバーの新刊が出る度に買っていた。僕にしては珍しい入れ込みようだった。それは、彼の本の主人公のように生きたいと憧れたからだ。でもうまくいかなかった。未だにいかない。きっと彼は”あらかじめ失われた青春”を描いているからだ。

 中島梓がこんな自慢話を書いていたと思う。高橋三千綱と麻雀をして負け、金の持ち合わせがないことを伝えると、「じゃ、体で払えよ」と言われた、と。くそ、かっこつけんなよな。一度でいいから言ってみたいもんだ。でも「いいよ」って言われたらどうしよう。どうしよう。彼が一時恋愛指南もの(「こんな女と暮らしてみたい」とか)に走った時を境に読まなくなってしまった。

 先日久々にこの本を見つけた。剣道をやる無鉄砲な高校生のまじめで変な恋の体験を綴ったものだ。単純なバーバリズムではないさわやかさ、潔さ、真っ直ぐさは相変わらずだが、以前に比べ作風に陰影が濃くなった感じがする。彼も中年だもんな。じめっとした人間関係などに悩んでる人は是非読んで欲しい。あわせて「9月の空」もお薦め。