PREVIOUS NEXT

4月30日(土)

はっと目覚めるとまだ8時半だ。
これだから年は取りたくないよ。もっと昼頃まで寝ていれば時間をつぶせるのにさ。
嵐は抜けたようで、揺れは収まっている。


フェリーにも随分慣れてきた。最初はバイクを乗せる手順も全くわからず、おろおろしたものだが、もう、いっぱしベテランの顔をしてる。
ただ慣れないのは、時間のつぶし方だ。この小樽〜舞鶴航路は高速船が就航して大幅に時間短縮となったけれど、それでも20時間もかかる。昨夜11時半出航で到着は今夜8時だ。

ベッドでうだうだした後、身繕いし、買っておいたおにぎりなどを食べ、本を読む。飽きて活字を追えなくなり、パソコンゲームを始めて熱くなる。頭を冷やしがてら、船内をぶらぶらする。デッキでぼーっと風を受け、やっぱりコーヒーぐらいはケチらないでおくか、と船内カフェでゆっくりくつろぐ。日差しが暖かくてちょっとウトウトする。
随分のんびりしたなあ、だいぶ時間つぶれたかな、と大きくのびをして、時計を見る。
何と。まだ朝の10時だよ。


今回は、こんなこともあろうかと、映画のDVDを何枚かレンタルしてきた。PCで見られるし。我ながらいいアイディアだが、予定通り帰らないと延滞金がかかる。
今更ラストサムライを見る。結構泣けた。小雪さんきれー。感想終わり。
PCの電源は、椅子テーブルが置いてある通路や、ロビーなどにコンセントがあり、皆そこから引っ張っている。一応マナーとして、分岐タップも持って行った。独占しないようにする配慮だ。
以前乗った苫小牧〜敦賀航路のフェリーでは2等寝室のベッドごとにコンセントがあって喜んだが、ここの航路ではなかった。それでも全く支障はなかった。

昼寝したり、船内をくまなく探検したり、今更キル・ビルを見るうち、ようやく夕方5時になった。
この時点で、コンビニで買い込んだ飲食料がすべて尽きた。到着までまだ3時間。お腹はこぺこぺ。喉はちくちく。
ここに至りて、我ついにフェリー会社の軍門に下る。
敗北感にうちひしがれながら、自販機でトリの唐揚げやらウーロン茶やらを買う。やっぱり高い。

「出発の30分遅れを回復し、到着時刻は定刻の午後8時です。」と手柄混じりの船長アナウンスがあった。
ようやく着くぞー。


そそくさとベッドの荷物をまとめて、ロビーに行って待つ。
ソファの脇にバッグ類を積み上げて座っていたら、何かの拍子にその荷物が崩れて、隣に座っている男の人にぶつかってしまった。あわてて謝ると、その人が親しげに話しかけてきた。30代半ばぐらいかな。話すきっかけを待っていたようだ。
もともと神戸の人で、現在は札幌に住んでおり、帰省するとこころだという。今回は車で帰るが本来はバイクが好きらしい。今回の帰省もバイクにすれば良かったかなー、と悔やんでいる。
随分荷物が多いですね、キャンプですか、と聞かれる。確かに大げさで恥ずかしい。いや中身はパソコンとカメラで、と言い訳する。
これから走る予定の中国地方の道路事情などを聞いてみる。日本海側は距離を稼げるが、太平洋側の移動は意外に時間がかかるとのこと。そんなに違うものだろうか。
下船の案内が始まったので、互いに、お気をつけて、と席を立つ。

舞鶴港に着いた。
船倉に下りてバイクの荷造りをすませ、すべての車が下船するのを待つ。バイクは一番後なのだ。
ライダー同士は、ちらちらと互いのバイクや装備をチェックしている。前にも書いたが殆ど大型バイクで、豪快な排気音を上げている。250ccクラスは僕以外はスクータとオフロード車。”ちゃんと理由がありますから”、てな余裕顔。なのに荷物は僕のが一番でかい。何となく肩身が狭い。
そのとき、「これ何ccですか?いいバイクっすねえ。」と話しかけてくれた人がいた。
それは唯一人いた自転車の兄さんだった。さすがにチャリには負ける気がしない。
失礼ことを言ってゴメンよ黒婦人号。この旅の間、へそ曲げないでおくれよ。

ようやくバイクの順番が来た。僕が先頭の位置だ。
誘導員の合図で発進しようとしたら、エンストしてしまった。あれっ。焦ってかけ直す。またエンスト。
後続のバイクがイラッとして爆音とともに追い抜いていった。
はっと気がつく。スタンドを上げていなかったので、安全装置が働いただけだった。
あわててスタンドを跳ね上げ、発進する。横目に映った誘導員が失笑していた。
「僕は初心者じゃないよー」と舞鶴の中心で叫びたい心境で、上陸。
夜の埠頭に放り出された。

とりあえず、街灯りの方向に走り出してみる。
あれ、なんたる暖かさだ。フェリーの放送で気温21度と言っていた。でも、もっと高いんじゃないかな。
小樽までの真冬のような冷たい風を思い出す。あれはつい昨夜のことだった。
それに比べて、なんと生暖かく、きもちいい風だ。
本州に来たんだー。うれしー。実感がむくむくこみ上げる。

さあてと、ホテルはどっちかな。
今夜だけは舞鶴で泊まることにして、予めホテルは予約しておいた。あとは成り行き任せだ。
静かな夜の街をぐるぐる回って、ホテルを発見し、バイクを駐める。既に何台かのバイクも並んでいる。
チープなフロントでチェックイン。チープな部屋に荷物を解く。安いキャンペーン価格の予約だったせいか、窓を開けると隣の建物の壁が見える裏側の部屋だ。

一息ついてから、夜の舞鶴市街に出てみる。何はともあれお酒買わなくちゃ。
駅の方に歩いていくと、結構大きいアーケード商店街になった。しかし、まだ夜の9時頃だというのにすべてのシャッターが閉まっている。人通りもなく、シーンとしている。たまーに開いていると思ったら居酒屋ぐらいだ。若者たちはどこにいるのだろう。
でも、暖かい。Tシャツ一枚で気持ちいいぐらいなんて、信じられない。と北の国から来た旅人は思うのだ。
ぶらぶらするうちに東舞鶴駅に着いてしまった。ここのキオスクも閉まっていた。
もう遅いし、また、舞鶴の市街地を足で感じながら、ふらふらとホテルに戻る。
ホテルの横にはローソンがあり、煌々と灯りを滲ませているが、残念ながら酒は置いていない。もうホテルで調達するしかないか。おつまみを買い込み、ホテルに戻って自販機でビールをゴットンと入手。

本州上陸と、これからの旅立ちに向けて一人で乾杯する。
窓を開け放つと、ちょっと潮のにおいを含んだ暖かな風が、時折ふうわりと吹き込んでくる。
シャワーを浴び、ビール片手に、電話したり、明日からの下調べをしたりしているうち、記憶がなくなった。

PREVIOUS NEXT