パラパラの秘密

なかなかブームが去らないパラパラ。それには理由がある。

ディスコが日本に定着したのは’78のサタデイナイトフィーバー前後だから,僕が学生の頃だ。何度か踊りにいった。ハッスルとかが定番で,みんな同じ方向を向いて同じ踊りを踊っていた。団体行動が嫌いなので,ちっとも楽しくなかった。
そのうち適当に体を揺らしていればいい時代になって,たまに行くのもいいな,と良く付き合った。
何たって,音楽に合わせて体でリズムを刻むのは気持ちいい。
しかし,基礎代謝量が落ちるのに比例して,内側のエネルギーが衰えてくるにつれ,ディスコはすっかり遠のいていった。
世はジュリアナブームだったかも知れない。

最近になって,クラブって良さげじゃん,行ってみたいなと興味を引かれるものがあった。
聞くところ,お洒落なスペースでだるいミュージックに乗り,ゆらゆら踊ってるみたいだし,悪くないな。
ただ,日本のクラブはガキども中心だし,服装チェックなんて恐ろしい店もあるらしいし。

第1回からずーっと惰性で見ているTV番組「ビバリーヒルズ青春白書」の中で「深夜クラブ」という店がある。
ここは,バーがあって,DJがいて,ステージがあって,若者から年輩の人まで踊ったりお喋りしたりしている。
こんなイメージの店なら,喜んで通うけど,日本じゃほんとに少ない。というか,有ったら教えて欲しい。
日本はやはりお子さま文化なのだろうな。

こないだアメリカの探偵小説を読んだら,いかがわしいバーに少年を連れて入った主人公に,バーテンがこう言っていた。
未成年をバーのスツールに座らせたら州から罰せられるから止めてくれ。
結局彼らはボックス席に移動するのだが,大人と子供をきっちりと分ける西欧文化が良く現れたシーンだった。
いくら形だけ真似しても,日本とアメリカは随分遠い。

と,思っている内にパラパラ時代。
TVで紹介されるクラブの様子を見ると,皆同じ方向を見て同じ踊りを踊っている。
リズムが16or32ビートになり,振り付け,ファッションが現代受けするもの,ということを除けば,70年代回帰,とも言えるし,もっと普遍的に,ラジオ体操風景にさも似たり,と言えなくもない。
携帯電話に象徴される未分化な原意識,中性キリスト教的集団ヒステリー,地下茎は泥の中で微睡む,などなど連想は広がる。

でも、パラパラを弁護すると,僕はその独自性に注目している。今までの踊りとはちょっと違う。

結論から言うと,パラパラは盆踊りだ。
見れば分かるが,あれは「手踊り」だ。足は頭打ちリズムで左右にステップするのが基本となっている。踊りのメインはいかに手を使ってセンスある表現をするかである。
盆踊りも,2拍子手揉み頭打ちリズムでスリ足歩行しながら,手をひらひらさせたり,三角の山を作ったりのパターンを繰り返す。

この足を地につけて手の表情を豊かにする踊りは,盆踊りも含めアジア全般に共通する農耕的表現であろう。
足のステップが中心で跳躍が目に付く西洋的踊りの表現とは大きな対比を見せる。
この意味で,パラパラは我が民族の根本に則った自然な踊りである。

黒沢明,七人の侍のラストシーン,晴れやかな空の下,力強いリズムで田植えを行う農民娘たちの血が,パラパラを踊る娘たちに,脈々と息づいているのを感じるのだ。

不運じゃなかった!

仕事が終わり、地下鉄駅にとぼとぼと降りていく。
東西線大通駅は島式のホームで、新さっぽろ行きと宮の沢行きが乗り入れる。
我が家の最寄り駅は新さっぽろ駅。終点だ。

その日は残業も飲み会もなかった。
いつものように心の内側にいがらっぽさと安堵感を抱えながら
ホームへの階段を足を引きずって降りていく。
キュンキュンキュンと札幌の地下鉄独特の、ゴムタイヤとガイドレールが軋む音が聞こえてくる。
どっち行きだ?乗り遅れないように足を早める。
ホームに滑り込む電車。一斉に人混みがざわめく。
(畜生。また宮の沢行きか。)
このところ、いつも反対方向の列車が先に来るのが気になっていた。
もしかして、俺ってツキがないのか。
そんな人生か。
と、ふと思うときもあった。

そんなことは信じてないし、ばからしい。
と思いながら、新聞の占いを読んでしまう。
弱っているのかな。

ホームで、くたびれた男女と同胞意識を感じながらぼんやり立っていて、
(あっ)と、ある考えに思い当たった。
列を離れて時刻表を見に行く。
やっぱりそうか。

5時、6時台は双方向とも5分間隔で運行している。
新さっぽろ行きは5分、10分、15分・・・発
宮の沢行きは4分、9分、14分・・・発

無意識のうちに両方の電車が来る確率が同じと思っていたけれど、
ランダムに大通り駅に着いたら、新さっぽろ行きが来る確率は5分の1にしかならないんだ。
5回に1回か。
それなら納得。

特別不運じゃなかったんだ。
それに気が付く僕って、ジーニアス?
単純に明るくなって、僕は地下鉄に飛び乗った。

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