2011年 読書記録

2011年 今年は何だかいけそうな気がする~

冊数書名My評価
★五つ
コメント
12月
63
テルマエ・ロマエ IV (ビームコミックス)
ヤマザキ マリ
エンターブレイン (2011-12-22)
★★★★
62
空色勾玉 (徳間文庫)
空色勾玉 (徳間文庫)
posted with amazlet at 11.12.27
荻原 規子
徳間書店
売り上げランキング: 25980
★★★日本古代を舞台にした神話的ファンタジー
きっと女の子が求める全ての要素が盛り込まれている(創造だけど)
全30巻の少女漫画を読んだような読後感
61
じみへん 熟々 (第11集) (コミックス単行本)
中崎 タツヤ
小学館
売り上げランキング: 3563
★★★★どんどん絵が下手になっている
それがまたいい
60
ゴールデンスランバー (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 5298
★★★解説によると伊坂は"プロット”よりも”展開”を志向しているとか
本作はそれに即した逃亡劇
でも、だったら伊坂じゃなくてもいいや
11月
58,59
【文庫】 それからの三国志 上 烈風の巻 (文芸社文庫 う 1-1)
内田 重久
文芸社
売り上げランキング: 4910
★★★★三国志ファンにとっては興味津々
孔明亡き後の三国の盛衰
魏の司馬一族の台頭と蜀の姜 維の孤軍奮闘、呉の衰亡
市井の研究者一世一代の好著
語り口も該博かつ流麗だ
57
魔王 (講談社文庫)
魔王 (講談社文庫)
posted with amazlet at 11.11.08
伊坂 幸太郎
講談社
売り上げランキング: 912
★★なんじゃこりゃ
関西の某市長が浮かんだ
10月
56
死神の精度 (文春文庫)
伊坂 幸太郎
文藝春秋
売り上げランキング: 2352
★★★★とぼけた死神といくつかの人生の終わり
最後に泣かせる
こういう伊坂が好きだ
それにしても彼の小説の題名、何とかならないのかな
55
グラスホッパー (角川文庫)
伊坂 幸太郎
角川書店
売り上げランキング: 3530
★★★★以前公園で紛失したイワクつきの本。ようやく再度購入する気分になった。
その間伊坂から離れていたので(おかげで上橋に出会った)、新鮮な気持ちで読めた。
ただ、読み始めて、作者本人にその手の嗜好があるのではないかと疑わせるほど残忍な暴力描写とか、こういうところで子供を絡めていいのかと引っかかりを覚えるシーンがあったり、ストーリー以外の面で、違和感を覚えた。
しかし、プロットの巧みさには驚かされるし、この話のキーマンである”鯨”の異能や酩酊感が全編を覆っていて、ある意味オーデュポンの世界に近いところに帰ったのかと思った。
終盤に至り数々の伏線が一気に回収されていくカタルシスは相変わらずで、当初の印象とは随分違った読後感となった。感動したと言ってもいい。
最大の伏線が最後の最後に主人公を襲う。
人生は夢幻のごとくなり。
54
狐笛のかなた (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
売り上げランキング: 10965
★★★★★古い民話のような、幻想的で切ない物語。
氏族内の争い事に妖術的な世界が絡まっていき、翻弄される人物たち。
心の声が聞ける少女、小夜。彼女に助けられた異世界の狐、野火。禁断の想いの行方と家督をめぐる激しい抗争。
息もつかせぬ迫力だ。
それらは、どのような終末を迎えるのか。
53
はじめてのオーケストラ・スコア―スコアの読み方ハンドブック
野本 由紀夫
音楽之友社
売り上げランキング: 156778
★★★スコアリーディングを始めるにあたり、楽器や配置の基礎知識を確認するために入手した。ほとんど既知の情報だったが、手元において参照するのが目的。
52
宇宙は本当にひとつなのか (ブルーバックス)
村山 斉
講談社
売り上げランキング: 1149
★★★ダークマター、ダークエネルギーなどの最近の研究動向がよくわかった。というか、何も分かっていないということが確認できた。
内容は平易で少し物足りなかったが、第一線の研究者による解説というところに大きな意味がある。
51★★★★今回はエジプトとシリア在住時のエピソード。
両方とも言ってみたい国なので、面白かった。
夫の研究のための移住というが、作者の動じなさ、度胸具合に感服する。尊敬の念さえ覚える。
旅行に行きたい。
9月
48-50
天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
売り上げランキング: 3977
★★★★★ついに最終章全3巻。
チャグム探しのロタ王国、バルサと共に旅をし同盟に奔走するカンバル王国、迫りくるタルシュ帝国の大軍と異世界が招く天変地異の予兆におののく新ヨゴ皇国。1巻ごとに舞台を変えながら、物語の全ての支流が大河となり圧倒的なカタルシスへ突き進む。
言葉もない。何という傑作だろう。
このような世界に誇れるファンタジーを知らずに死ぬところだった。

十二国記が世界から個人へと向かう物語なら、こちらは個人から世界へ向いていく。そのような違いを感じたけれど、どちらも大好きだ。
47
ママゴト 1 (ビームコミックス)
松田 洋子
エンターブレイン
★★★★★スナックのママ・映子は風俗仲間だった滋子の子供を押しつけられる。
映子と純真無垢な肥満少年・タイジの奇妙な生活。
人生の警句に満ち、「涙なしには笑えない」。
「赤い文化住宅の初子」と「まほおつかいミミッチ」を昇華させたような作品。
断然お薦め。
46
PIL (オフィスユーコミックス)
ヤマザキ マリ
創美社 (2011-08-19)
★★★パンクを愛する坊主頭の女子高生と、お洒落で浪費家のお爺さん。二人の同居生活。自伝的な設定なんだろうが、作品としてのキャラ設定が他作品に比べもひとつ。
45
蒼路の旅人 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
売り上げランキング: 7817
★★★★★15歳の少年となったチャグム皇太子が父王との確執の末、海洋王国のサンガルへ乗り込んでいく。
過去の物語でも伏線となっていた南の大陸の強国、タルシュ帝国は周辺諸国へも侵攻し、既に陥落したサンガル王国を使って、チャグムの新ヨゴ皇国など北の国々へも野心の矛先を伸ばしてきた。チャグムは捕虜となってタルシュ帝国まで連行され、その強大さを目の当たりにする。
国家という存在が物語の前面に現れ、それにチャグム自身の成長物語が共振する。
目を離せない。
43,44
神の守り人〈上〉来訪編 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
売り上げランキング: 10047
★★★★★一つの街を全滅させるほど圧倒的な力を持つ<タルハマヤ>という異世界の神。それをを呼び寄せる力を持つ少女アスラをめぐり、さまざまな思惑で追っ手がかかる。バルサは彼女を守りきれるのか。
舞台となるロタ王国は中央アジアのオアシス国家を思い起こさせる。
神話の成立、民族対立、風習の異同。相変わらず文化人類学的な視点も織り交ぜ、好奇心を満たしてくれる。
タルハマヤは容易に核兵器になぞらえることができる。国家は絶対的な武器として手に入れたがり、アスラ自身その強大な力を楽しむ誘惑に駆られる。それを封じ込めるのは拮抗する力なのか、個人の思いなのか。
とにかく”巻を措く能わず”。
8月
42
青年のための読書クラブ (新潮文庫)
桜庭 一樹
新潮社 (2011-06-26)
売り上げランキング: 18633
★★★★★とんでもない奇書。
女学園という”世界”で繰り広げられる壮大で無意味な抗争。驚くべき創世記とそれを受け継ぐ者たち。カリスマやフィクサーが生まれては消える。最後にこの甘美な虚構世界の崩壊を救ったのは誰か。これは名作文学を骨格とするファンタジーだ。
高貴で醜いアザミ、美貌のズべ公紅子、作者はどちらの魂の孤独にも優しい。

って何のこっちゃと思った人は一読すべし。
41
玄米せんせいの弁当箱 1 (ビッグコミックス)
魚戸 おさむ 北原 雅紀
小学館
★★野菜ソムリエでもある某HTBアナウンサーが、Podcastで推薦していたので読んでみた。
「美味しんぼ」の健康志向ソフトバージョン。
食にまつわる知識を得るためにはいいのだろうけれど、作品としての魅力が弱いと感じた。
2巻以降は何か機会があったら読んでもいいかな、ということに。
40
虚空の旅人 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
売り上げランキング: 9091
★★★★★シリーズ第4弾。
今度は海の民サンガル王国が舞台。
王位継承式に招待された新ヨゴ皇国皇太子チャグムと星読博士シュガ。
新王の弟の乱心や伝説の海底王国の「目」となった少女らに関わるうち、南の大陸の巨大な野望に巻き込まれていく。
おそらく文化人類学者としての面目躍如なのだろう。南の島しょ地域の風習がリアルに描かれている。神話や伝説、シャーマニズム、男女の役割、社会階層やアウトローの存在。どれをとっても真昼の光る波頭や夜の熱風が感じられるほどリアルだ。
そして、国家間の力関係や攻防がテーマとして立ち現われてきた。今後の展開も楽しみだ。
39
夢の守り人 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
売り上げランキング: 8900
★★★★★守り人シリーズ第3弾。もう止まらない。
あるとき新ヨゴ皇国の第1妃や村の娘らが次々に眠り込んだままとなる。
現実世界に絶望した者たちが異界の花の世界に囚われてしまったのだ。
それを助け出そうとする大呪術師トロガイとバルサの幼馴で薬草師のタンダ。
一方バルサは不思議な放浪の歌い手ユグノと出合う。
今回は精神世界の攻防が主体の物語だ。賛否両論あったらしいが、僕は感動した。
ここで語られるテーマは、夢のように美しくもとらえどころのない世界と地味で面白みはないが地に着いた実生活との対立、あるいは補完関係だ。
例えば芸術と生活、精神と肉体、音楽と技術、なんでもいい・こういった切り離すことのできない人間のアンビバレンツについて、これほど美しくも恐ろしく説得力を持って描ききった評論を知らない。
このファンタジーはどんどん深化していっているようだ。
7月
38
闇の守り人 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
売り上げランキング: 5201
★★★★守り人シリーズ第2弾。女主人公バルサの故郷、北のカンバル国。彼女の生い立ちが明らかとなり、王国をめぐる陰謀が動き出す。全ての人物が次第に闇の洞窟世界へと導かれていく。闇の守り人ヒョウルとは何者なのか。
この巻では北方山岳民族の暮らしと神話的精神世界のあり様を軸として、部族内の権力闘争が繰り広げられるという構成だ。
とにかく面白い。バルサの魂の開放も見所だ。
37
酒のほそ道 1 (ニチブンコミックス)
ラズウェル細木
日本文芸社
★★★★前からこの作者とこの漫画が気になっていた。今回コミックレンタルの冊数合わせで借りて見た。
面白い。さまざまな趣向で酒肴を語る。主人公の行動も飄々としていて、たまに女性にやり籠められたり、ユーモアもあって心地よく読めた。そしてお酒が飲みたくなった。挿入されたエッセイも面白い。レシピも付いているし、盛りだくさん。
次も読んでみよう。
36
星守る犬
星守る犬
posted with amazlet at 11.07.29
村上 たかし
双葉社
売り上げランキング: 723
★★普通の気弱なオジサンが失業、病気、離婚などで人生から転落し、愛犬とともに最後のドライブ。
よくあるハチ公的な話。特に引っかかりもなくスルッと読了。それだけ。
28-35★★★★★思い出した。モーニング連載時注目して楽しみに読んでいたのに、ある日突然休載されたのだ。
その後最後の2巻はコミック書き下ろしという形で完成したらしい。
今回コミックレンタルで一気に借りて読んでみた。
舞台は金星。人類が移住してから一万年後の世界。主人公のヒルコたち人類は鬱蒼とそびえたつ巨大樹木の森の中腹部で暮らしている。かつての文明は退化し、巨大生物の狩猟などで糊口をしのぐ原始的な生活を送っている。
そこに別な部族の襲来や、シシザルと呼ばれる破壊的な知的生物との邂逅、精霊と呼ばれる存在の出現。
物語はヒルコの部族に過酷な運命を課し、ヒルコが地上へ向かうあたりから驚くような展開を見せていく。
とにかく凄いストーリーだ。空間的にも時間的にも重層的な構造を持ち、神話的な民族興亡史からSF的文明論まで、とんでもない広がりを見せる。
哲学的な思索が提示されたと思えば、さまざまなヘンテコ生物の生態がリアルに定義されたり、この作者の想像力には脱帽するしかない。
スクリーントーンを一切使わないという画力も素晴らしく、さまざまな要素が有機的に結びついた稀代の傑作マンガだと思う。
機会があったら是非読んでみてほしい。
28
精霊の守り人 (新潮文庫)
上橋 菜穂子
新潮社
売り上げランキング: 2973
★★★★伊坂本に戻れなくて、ふと手にしたこの本。ジュブナイルとして書かれたファンタジーのようだ。しかし大人向けとしても評価が高いらしく、著者が文化人類学者というところにも引っかかりを覚え、シリーズ一作目を買ってみた。
日本のファンタジーというと真っ先に「十二国記」が頭に浮かぶ。あれを超えるものがあるのだろうか。
古代アジアのどこかの地方のような新ヨゴ皇国が舞台。精霊の卵を産みつけられた王子とさすらいの女用心棒バルサが、ふとした出会いから関わりを深めていく。追手との死闘と呪術師が読み解く異世界の存在。
一気に読んでしまった。言語法則や民族間の関係性、都市や社会の構造など随所に文化人類学的な視点を織り交ぜつつ、圧倒的な物語の力で一つの世界を構築している。それは十二国記とはまた違ったもっと柔らかい世界だった。
だめだ。ハマってしまった。
27
はじめてのトポロジー (PHPサイエンス・ワールド新書)
瀬山 士郎
PHP研究所
売り上げランキング: 53766
★★★★一般向けの概説本ではあるが、トポロジー的イメージを想起する手がかりが丁寧に与えられていて、分かりやすい。
それでいて、この学問の深淵をチラリと見せてくれて、好奇心をくすぐられる。
例えば、2本のメビウスの帯の縁を全て繋ぎ合わせると、どんな形になるでしょう。
トポロジー世界の入り口を覗き見るには絶好の本だと思った。
26
ガロアの群論 (ブルーバックス)
中村 亨
講談社
売り上げランキング: 88455
★★★★トポロジーの本を読むと頻出する"群"という概念。ぼんやりとした定義ぐらいしか分からなかったので、読んでみた。
非常に時間がかかった。再三読みなおし何度も逆戻りし、何とか理解しようとした。それでも、啓蒙書だからか結構論理を端折っている部分もあり、十分に理解できたとは言えない。ただ、"群"というものの意味は把握できたような気がする。数や演算だけではない概念なのね。それだけでもよかった。
それにしても天才というものは凄いね。
6月
25
次元とはなにか 0次元から始めて多次元、余剰次元まで、空間と時空の謎に迫る!! (サイエンス・アイ新書)
矢沢 潔 新海 裕美子 ハインツ・ホライス
ソフトバンククリエイティブ
売り上げランキング: 8963
★★★トポロジーの世界観に突然興味がわいて手に取った。
0次元から一つずつ次元を増やしていき、最後は超ひも理論とかプレーン宇宙など最新の宇宙論のトピックまで導いてくれる。
ただし、詳しい議論には踏み込まず、概括的な紹介記事の羅列にとどまっており、あまり好奇心は満たしてくれなかった。
でも、我々の宇宙が11次元かもしれないなんて、不思議でワクワクするよ。
23,24
遥かなる未踏峰〈上〉 (新潮文庫)
ジェフリー アーチャー
新潮社
売り上げランキング: 99366
★★★彼の作品はほとんど読んでいる。本作もうまいし読ませる。一人の名登山家の生涯を、レトリックを駆使した文体や、手紙のやり取りを随時挿入するなど、様々な手法を駆使して語っている。
ただ、人物伝でもないし、登山小説でもないし、恋愛小説とも違うし、中途半端な印象。世界最高峰チョモランマへ人類としての初登頂に成功したのか、という”クライマックス”が何とも盛り上がらないまま終わってしまう。人物描写も類型的だし、物語の背景も希薄だ。
もう彼の筆力も衰えてきたのかと心配になる作品だった。
5月
22
プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
万城目 学
文藝春秋 (2011-04-08)
売り上げランキング: 43
★★★「鹿男あをによし」とか「鴨川ほるもー」とか前からタイトルが気になっていた。テレビや映画化されたものを見てあんまり面白くなかった。良くあることで、原作はもっと別の味があり、だからこそ売れているのだろうと思っていた。
その作者の本作、単行本の帯を見て興味を持っていた。どんな話なんだろう。文庫化されたので、この際読んでみた。
会計検査院と豊臣の伝統を受け継ぐ者たちのせめぎあい。
発想が突飛だが、丁寧に検証された事実を繋ぎ合わせてリアリティーを保ちながら、最後のクライマックスに持っていく文章力はさすがだと思った。
ただ、検査院側はち密に描かれているものの、豊臣側はやはり無理があるのか世界観がもう一つ構築しきれていないと思った。
当初もっと歴史的な文脈から掘り起こしたストーリーかと思ったら、どちらかというと昨今のアラブ革命のような現代のクーデター的な視点が強調されていて、期待はずれだった。だからお姫様の取り扱いにもひとひねり欲しいかったし、例えば性同一性障害の設定にも無理やり接ぎ木したような感じが拭えなかった。
21
今日からちょっとワイン通 (ちくま文庫)
山田 健
筑摩書房
売り上げランキング: 607656
★★★★著者はサントリーの広報に長くいて世界のワインを飲みつくした人。
決してお勉強やデータの本ではなく、ワインにまつわる様々なエピソードや経験が楽しく語られている。
文章もうまく、楽しげな交友録や業界の裏話、ワインそのものについての深い知識や提言など読んでいて飽きさせない。そして気づかぬうちにワインを見る目が養われている。そんな本だ。
ワイン愛好者や興味がある人に是非お勧めする。まずこれを読んでから、もっと詳しい本などでワインの深い森へ分け入っていけばいいと思う。
さて、ワイン飲もうっと。
20
テルマエ・ロマエ III (ビームコミックス)
ヤマザキマリ
エンターブレイン (2011-04-23)
★★★★今回は、もちろん文化比較やギャグも快調だが、古代ローマの政争などストーリー重視の傾向。その分まだ手探りの感があった。
とはいえ、顔の平たい族の温泉街に驚く話など、相変わらず笑えて勉強になって面白いよ。
19
チルドレン (講談社文庫)
伊坂 幸太郎
講談社
売り上げランキング: 2205
★★★★連作短編集。
陣内という愛すべき迷惑キャラが縦糸になっている。
独自の価値感で喋り散らし周囲を翻弄するが、実は真実を内包しており結果的に世界を救う。伊坂作品によく登場するタイプだ。
テーマとしては父子の確執とその克服マニュアルか。
相変わらずプロットが巧みで一気に読ませるし、本作はキャラクターに人間味があって気持ちよく読めた。
特に「レトリバー」という短編が好きだ。
仙台駅前で、長時間動かない人間たちを発見する陣内。その理由を勝手に推測するところから物語が動き出す。
定点カメラに映る雑踏の中で静止する人物、そんな映画的な場面描写と、日常に潜む異空間を切り取るシナリオが素晴らしい。
仙台駅のデッキでボーっとした経験が何度かあるので、親近感もあった。
4月
18
トポロジカル宇宙 完全版―ポアンカレ予想解決への道
根上 生也
日本評論社
売り上げランキング: 70723
★★★★★宇宙というタイトルであはるが、宇宙論そのものではなくてトポロジー数学の解説本である。
トポロジーに突然興味が湧いてきたので読んでみた。
トポロジーの基礎的概念である「多様体」の定義をWikipediaで調べて見てほしい。頭が痛くなること必定である。
この本では難しい数式を一切使わず、ポアンカレ予想の理解を試みている。
概括的な紹介本ではなく、思考実験を積み重ねて多次元世界を直感的に想像できるよう導いてくれる、素晴らしい本だ。
例えばこんな話を聞いたことがないだろうか。
「宇宙はどこまで行っても果てはないが無限ではなく、結局もとのところに戻ってくる」
宇宙の素朴なモデルの一つだろうが、今までは理屈ではなんとなく想像していたものの直感的イメージとしては浮かんでこなかった。
それが、この本の4次元空間を3次元空間内で表す「宇宙儀」によって初めて理解できた(ような気がする)。
大学の講義資料をもとにしているらしいので、若干言葉不足のところも感じるが、常に受講者で満席となる人気もうなずける。
この本はあなたの頭脳への挑戦だ。
17
★★★★ペレリマンという数学者は100年間誰もがなしえなかったポアンカレ予想の証明を完結した。しかし雨あられと降り注ぐ賞や賞金を無視し、人前から一切姿を消したまま現在に至る。
その発端となったポアンカレによるトポロジーという数学分野の成立と、最終的な解決に至るまでの道筋を丁寧に描いている。
数式は使われていないが、記述の意味を辿るだけでも難しい。何せペレリマンの証明の正しさを専門分野の数学者たちが4年がかりでやっと検証したぐらいだ。素人の手が出せる領域ではない。
しかし、人物列伝としても良くできており、個性豊かな数学者たちのエピソードを読むだけで知的な楽しみを味わえる。
例えばポアンカレという人物の優しさや勇気、ペレリマンの奇行とその理由など、感銘を得ることを受合う。
トポロジーそのものにも興味を持った。
16
アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)
伊坂 幸太郎
東京創元社
売り上げランキング: 2281
★★★★★レビュー
13-15
船に乗れ! Ⅰ (ポプラ文庫ピュアフル)
藤谷治
ポプラ社 (2011-03-04)
売り上げランキング: 190930
★★★★★レビュー
3月
12★★★★イタリアを中心とした各国料理のエピソードとレシピ。
貧乏画学生の頃とか札幌でグルメ番組をしていた時の話など面白い。
料理もあまり聞いたことのないものもあり、なじみのパスタなども本場のテイストが加味されているようで、しかも結構いい加減なレシピなので、是非試してみたくなる。
11『ホームレス川柳 路上のうた』

文庫版、128ページ、ソフトカバー付き
定価: 700円(内訳 販売者350円+会社317円+税33円=700円)
★★福岡のビッグイシュー販売者とそのお仲間が路上生活の毎日をつづり続けた800句。選りすぐりの300句をまとめ本にしました。12月10日より全国のビッグイシュー販売者が販売します。

という記事を新聞で見て、さっそく近くの販売所で買ってみた。
ホームレス生活の日常が自虐的ユーモアで詠まれている。
冬の寒さと夏の虫が特に大変そうだ。
でも、ちょっと楽しそうでもある。

まあ、人助けにはなったかな。

10
砂漠 (新潮文庫)
砂漠 (新潮文庫)
posted with amazlet at 11.03.28
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 19790
★★★今回は青春小説だった。
男女5人の学生生活を軸にした物語。
中心人物は何といっても、西嶋だ。
強烈な変人キャラクターだが可愛げがある。
彼の主張は、とにかく行動しろ、目の前の人を救え、ということだろう。
頭のいい人は、難しい分析をして解決したつもりになっている。
きっとこの本での伊坂の主張なのかもしれない。
ただ、僕にはなんだか一種の思考停止に思えた。

いつも通り創造力豊かな言葉のセンス。
伏線に満ちたエピソードが解き明かされるカタルシス。
スタイリッシュな構成の青春小説。
しかし、現実感がほとんどない。
西嶋なんてほとんどアンドロイドのようだ。
青春時代特有の生々しさ、自責や後悔、苛立ちや喜び。
恥ずかしい背伸び、尊大さ、過剰な自意識、胸が痛くなるレンアイ。
そういった要素が見事なまですっぽりとそぎ落とされている。
戸惑ってしまう。
それが伊坂小説の本質ではないはずだが。
2月
9
陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)
伊坂 幸太郎
祥伝社
売り上げランキング: 3277
★★★★★今度は4人組の男女のギャングの話。
三人称の語り口は一歩下がった視点から彼らの行動を映し出す。
相変わらず比喩に満ちて軽快な会話は真剣な場面もユーモラスにしてしまう。
スタイリッシュな銀行強盗と横取りされた現金の行方、彼らの過去と出合いの物語、輻輳するストーリーとと胸のすくような結末。ぐいぐい話に引き込まれ、そして驚かされる。
しかし、この本の真のテーマは親子の愛情物語だ。父親とは、母親とは、離婚、子どもたちの心の不安、いじめ、自閉症。そんな重い足枷に何とか翼をつけて、相互理解の空へと飛び立たせようと試みているように思われた。大きな感動を覚えた。
8
重力ピエロ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 3536
★★★★だんだん分からなくなってきた。
伊坂って何者?

この作品はある家族の物語だ。
それが一貫して仲の良い兄弟の兄の視線で語られていく。
それまでの作品では、様々な人物の一見無関係なエピソードが次第に絡み合っていくという展開だったが、本作は大きく異なっている。

そして弟が負う十字架の重荷と放火事件という不安が背景に輻射している。

しかし、ミステリーとしては結果がすぐ読めてしまうし、プロットも特に意外性はない。
今回は遺伝子関係、以前の作品ではカオス理論やフェルマーの定理など、理系の知識も豊富なことは窺わせる。

もちろんぐいぐい読ませる筆力や、僕らの人生の琴線に触れてくる警句とかユーモアは横溢している。

登場人物の造形の魅力的なこと。
主人公の父親の素晴らしさ。
泣きそうだった。

読後の感想を言えば、
これはミステリーではなく伝統的な文学作品だ。
親と子、家族のあり方をぎりぎり問い詰めていると思った。

まいったな。

7
古代史がわかる「万葉集」の読み方 (新人物往来社文庫)

新人物往来社
売り上げランキング: 205361
★★★★万葉集や古代生活にまつわるエピソードが一問一答形式で紹介されている。
目次の一部を以下に示す
少しでも万葉集に興味ある人なら読んでみたくなると思うな
しかもそれぞれ最近の研究成果に基づいており、新たに目を開かれたことも多かった。

・万葉集はいつ成立したのか
・柿本人麻呂は刑死したのか
・大伴家持は万葉集の編纂者か
・貧窮問答歌は古代農民の姿の実写か
・万葉の相問歌に歌われる恋のマジックにはどのようなものがあるのか
・複数の男たちに求婚された伝説の処女たちはなぜ自殺をしなければならなかったのか
・古代の人たちはなぜ盛んに酒を飲むのか
・万葉集は本当に日本人が書いたものなのか
6
ラッシュライフ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 6457
★★★現代の街における人間崩壊と再生の物語。
泥棒、失業者、独立の夢破れた画商、自分を売った画家、強気の不倫女医、教祖にのめり込む若者、老犬。
それぞれの物語が独立して語られ、それらが次第に絡み合って、最後にカタルシスが訪れる。グランドホテル形式だ。
プロットが見事だし、語り口も飽きさせない。相変わらず不思議な警句にも満ちている。
ただ、僕の好みの問題だが、何か無理やり物語をつなげたような違和感を感じてしまった。作品を遠くから見た時の彩度みたいものが、前作「オーデュポンの祈り」に比べて少し弱いという感じ。
1月
5
オーデュボンの祈り (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 1581
★★★★★まずは伊坂のデビュー作をと手に取った
驚いた驚いた
ミステリーの賞をとった本ということでの想像を大きく裏切られた
舞台は社会から隔絶された島
登場人物も変な人ばかり
狂った画家動けないほど太った女唯一外界と行き来する船主島のルールを拳銃で体現する美しい男
極めつけは喋る案山子だ
主人公はこの島に「足りないもの」を見つけられるのか
そして現実世界を象徴する残虐な警官の魔手は届くのか
象徴性と寓意に満ちしかも数々の伏線が最後にひとつになる
この物語は現代における「不思議の国のアリス」の再生だと読みながら僕は思った
4
フィッシュストーリー (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社
売り上げランキング: 4516
★★★★★帰りの地下鉄で読む本がなかった
選ぶ時間もなく勢いで買ってみた
ベストセラーとか時代の寵児的な本はあまり買わない派だから
若い奴らが面白いと言ってたが手を出さずにいた
どうせお涙ちょうだいの恋愛小説系かなという先入観念
で読んでみて土下座
額こすりつけます
こんな不思議で唸らせて笑って泣いてやがて悲しき作家だったとはね
いっぺんに取り憑かれました
夜の動物園の生臭さ
サクリファイズは筒井の傑作熊の木坂本線の再来
表題作は年代記的な因果応報
ポテチは泣くし

今年は伊坂の文庫読破決定だよ

3
さよならドビュッシー (宝島社文庫)
中山 七里
宝島社
売り上げランキング: 4038
★★ミステリーとしてのプロットはなかなかかな
でもねえ
何かずれてる
ディテールが
何より音楽の面で常に違和感がありました
2
インシテミル (文春文庫)
米澤 穂信
文藝春秋
売り上げランキング: 1628
★★★本格ミステリーのパロディーか
一気に読ませせる力がある
異空間的な舞台設定も好み
しかしいかんせん文章自体に魅力を感じなかった
1
ピアニストは指先で考える (中公文庫)
青柳 いづみこ
中央公論新社 (2010-12-18)
売り上げランキング: 104458
★★★★解説で触れられていたように30代の女性ピアノ練習者をターゲットにした本
したがってピアノを学んでいる人にとってはメカニックやテクニックからドレスや靴の選び方までプロの目でアドバイスがあり非常にためになる
その他音楽にまつわる様々なエピソードも豊富で音楽好きなら誰にでも十分楽しめると思う

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