山形行 3

恵みの朝

翌朝、深い眠りから覚める。7時前に共同キッチンに降りるとまだ誰も起き出していない。
冷蔵庫から卵を2個とり、コンロで目玉焼きを作る。食パンとバター、コーヒーとミルク。
手入れされた庭を眺めながら、豊かな気持ちで朝食を取る。

オーナーの兄さんが来た。色々話してみる。あのピアノは彼が弾くという。ジャンルはクラシック。おお。チャリダーでもあり、今年の夏も室蘭に上陸して、北海道を走ったという。感じのいい青年だ。後でネットを見ると、夜はオーナーや客がキッチンに集まり自然に宴会になることもあるらしい。
でも、ユース的な押しつけはない。客との距離感がいい。ニュージーランドの宿をモデルにしたという。イギリスのB&Bのような感じか。ヨーロッパの家庭的なホテルも、同じような雰囲気だった。
「ゲストハウス ミンタロハット」という。是非また利用して、話してみたいと思った。今回の旅の一番の収穫と行ってもいいかもしれない。

さて、ちゃんと食器を洗って、荷造りし、オーナーに見送られながら出発する。
残念ながら、雨はまだ止んでいない。
一応、山寺に向かってみる。雨は次第にひどくなる。たどり着いたときには最高潮となり、山々は霞んで殆どその姿が見えないほどだ。ガイドブックに出ていた、山寺からの素晴らしい眺め、は到底期待できない。
一応傘は持ってきたから、観光は可能だが、僕はすっぱりと諦めた。今回はこれで切り上げよう。
もっと、気持ちのいい日にゆっくりと参拝したい。またあのゲストハウスに泊まって、山寺をゆっくり見て、と次回のツーリングのイメージが頭に浮かんだことも、大きな理由だ。楽しみは取っておこう。
そう思ってバイクのエンジンを吹かした途端。雨はちょっと小ぶりになったが一度決めたことだ。

山紫水明

ちょっと道を間違え、リカバーしようとしてウロウロしていると、風情のある踏切があった。

旅情

写真でも撮ろうかとバイクを降りてパチパチやっていると、一人のオバサンが歩いてきた。
すれ違い際、「ご苦労様です」とニコニコ挨拶してきた。山形の言葉は何か柔らかい。
「おはようございます」と返事する。うれしい気分になった。
さてと、今回のツーリングは終わり。もう帰ろう。時刻は9時。雨は強い。

秋間近

帰りは、こうなったら高速を使って一気に帰ろう。
携帯やカーナビで調べてみる。今から高速を使うと17時発のフェリーに十分間に合いそうだ。札幌には深夜に到着し、酒を飲んで休める。下道だと、深夜便になってしまうから、札幌には朝方着。翌日も無駄になる。この差は大きい。
ただ、すぐに高速に乗らず、秋田県の横手まで下道を通り、そこから高速に乗ってもフェリーに間に合いそうだ。ちょっとでも高速代をけちるため。そのルートで帰ることに決定。
走るにつれ、雨脚は弱まり、ついに晴れた。あれれ。でもそれも運というもの。逆らわない。

県内の道の駅で、だだ茶豆発見。ただ、「枝豆」という印刷の脇にマジックで「だだちゃ」と書いてある。産地でもないようなので若干の疑惑はあるが、一袋購入。帰ってから茹でて食べてみると、だだ茶のようでもあり、その割に濃厚さに欠けるような気もし、微妙だった。

最上川沿いを進む。五月雨ではないけれど、前日からの雨を集めてトウトウと流れている。ドライブインで名物のこんにゃく玉を食べる。素朴で好きだ。

150円也

道の駅で一休みしていると、隣に停まっていた軽トラの窓から、笑い皺が深い爺様が顔を出し、「やっぱり、母親だってさ」といきなり訛り満開で話しかけてきた。
何のこっちゃと思ったら、福岡で子ども殺しがあり、犯人が母親だったと今ラジオのニュースで聞いたらしい。きっとこの事件に多大な関心を持っていたのだろうな。
「へえそうですか」と驚いたふりをしておいた。山形って、そんな人が多かった。何か山形が好きになった。

秋田に入る。すっかり空は晴れ上がり、いい天気だ。田園風景の中を疾走する。何とも気分がよろしい。今回は結局羽黒山しか見てないけれど、バイクツーリングって道中の走りこそが楽しいから、それでいいのだ。(赤塚先生の冥福を祈る)

水循環

横手でガソリンを入れ、高速に乗る。
実は、一ヶ月ほど前、車を運転していてスピード違反で捕まった。札幌市内の40キロ制限の道で16キロオーバー。ちょっと前の車と車間を詰めようとして一瞬ふかし時速56キロ。1万2千円。くそ。
3ヶ月で点数が消えるというので、ずっと安全運転でここまでたどり着いた。高速に乗れば、よりリスクが少なくなる。パトカーにびくびくしながら走らなくてもいい。ということも理由だ。
しかし高速はあまり好きではない。風景も楽しめず、唯々距離を稼ぐだけだ。途中一度だけ給油した。今回一番の高値、リッター184円(ハイオク)。

とにかくひたすら走って、青森インターには4時20分頃到着した。フェリーは5時発で、乗船が20分前までとすると、ぎりぎり間に合う。ジャストタイミングだ。
何気なく、胸ポケットから高速券を取り出そうとして見ると、あれ、チャックが開いてる。
そして、高速券がない!
チャック付きの胸ポケットに支払い用のクレジットカードと共に、高速券を入れてしっかり閉めていたはず。あ、そうかSAでガソリン入れたときに、カードで支払って、閉め忘れて。
幸いなことにカードは無事だったけれど、高速券はどこを探しても出てこなかった。
一度北海道内で同様の経験をしていたので、何とかなるとは思ったが、時間が心配だ。

津軽弁満開の係員の爺さんに事情を話し、手続きをして貰った。横手での買い物のレシートがあれば証明になるのだが、そういうときに限って横手のコンビニのレシートだけ捨ててしまったことを思い出す。しかし、入場の記録と照合できたらしく、めでたく認定して貰えることになった。
もう時間は35分過ぎ。

諦めず走り、ターミナルに到着したのは出航の15分前だった。もうトラックがフェリーに乗り込んでいるのが見える。だめか。
受付に飛び込んで姉さんに聞いてみたら、間に合いますよーとのんびり言われた。

よかったー。なんとか最後尾で乗り込み、2等船室に荷を解く。
買い物をする暇がなかったので、カップ麺を買って夕食とする。
パソコンで小遣帳などつける。
何が高かったかといって、フェリー代より宿泊費より食費より、高速代より、ガソリン代だった。

世界の終わり

函館に着いた。
高速は長万部からだ。殆ど車もいない。広大な夜の中でたった一人走る。走る。寂しい気持ちになる。夜は都会に限るな。
帰宅して酒を飲むことだけを楽しみに、一度も休息せずに札幌まで駆け抜けた。

自宅0時30分着。山形を出てから約16時間。
翌日まで耳鳴りが収まらなかった。

3日間で山形往復はさすがにきつかった。でも充足感は大きい。
これだからツーリングは止められないのだ。

山形行 3” への2件のコメント

  1. 今頃になって、見つけました!
    天気、ほんと、よくなかったですねぇ。
    でもそれなりに、ちゃんとツーリングを楽しめるところが、さすがです。

    雨にぬれたススキと線路の写真、デスクトップにいただきました。

    ぜひまた来てください!楽しみにお待ちしています。

  2. >みんたろさん
    ご訪問ありがとうございます。
    来シーズンに是非また行きたいと思っています。
    そのときはよろしくお願いします。 :wink:
    それまではネット上で山形便りを拝見してます。

    ps
    デスクトップに雨の写真をつかうと気分が滅入りますよ(笑)

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